相続の発生によって相続税申告が必要になった場合に、税理士に依頼せずにご自身で相続税申告の手続きを進めたいとお考えになる方もいらっしゃるかと存じます。
相続税申告は、税理士に依頼せずに自力で行うことができるのでしょうか。
結論から申し上げますと、ご自身で相続税申告を行うことは可能です。ただし、相続税申告は内容が非常に複雑で、専門的な知識が求められる難しい手続きとなります。
相続税の申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月」ですが、それまでにも期限が定められている手続きがあります。不慣れな手続きを、定められた期限内に正しく進めるのは容易なことではありません。
ご自身での手続きにはさまざまなリスクが伴いますので、ご自身で手続を進めるか否かの判断は慎重に行う必要があるでしょう。
こちらのページでは、相続税申告をご自身で行う際に知っておきたい手続きの流れをご紹介しますので、参考になさってください。
相続税の申告および納付の期限について
先ほどお伝えしたとおり、相続税申告書の提出および納税には「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限が設けられています。この期限の日が土日祝日に該当する場合には、翌平日まで期限が繰り越されます。
相続税申告が必要にも関わらず申告納税しないまま期限を超過してしまうと、延滞税や加算税などの追徴課税の対象となりますので、ご注意ください。
相続税申告書の提出先および提出方法
相続税申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。財産を取得した人の住所地を所轄する税務署ではありません。
また、相続税の申告書は、相続等を機に財産を取得した人が共同して作成するのが一般的です。相続や遺贈によって財産を取得した人だけでなく、相続時精算課税制度に係る贈与により財産を取得した人も、申告書を作成する必要があります。
何らかの理由があって申告書を共同で作成できない場合には、それぞれ別で申告書を提出することも可能ではありますが、相続税の総額や各人の相続税額などに相違がないよう慎重に作成しなければなりません。万が一記載に相違があると、税務調査が入る可能性が高まりますのでご注意ください。
相続税申告期限までに押さえておくべき手続き期限
相続税の申告期限に間に合うように申告納税するためには、さまざまな手続きを段取りして順に進めていく必要があります。
相続開始の翌日から3ヶ月以内
■死亡届の提出
まずは被相続人の住所地を所轄する市区町村役場へ、死亡届を提出します。死亡届には死亡診断書の添付が必要です。
なお、葬式に要した費用については、相続税申告の際に控除対象となります。費用の証明のため、領収証は大切に保管しておきましょう。
■遺言書の確認
相続手続きに入る前に、被相続人が遺言書を作成していたかどうか確認します。遺言書には主に3つの種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)がありますが、ご自宅等に自筆証書遺言が保管されていた場合には、家庭裁判所に検認の申立てを行い、検認手続きをとる必要があります。
■財産調査
被相続人がどのような財産を所有していたのか調査します。被相続人が所有していた資産価値のあるプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続の対象となりますので、すべて調査し、明確になった財産を財産目録という一覧にまとめておくとよいでしょう。
■相続方法の決定(単純承認、相続放棄、限定承認の決定)
マイナスの財産が多いなどの理由で相続放棄や限定承認を選択する場合には、自己のために相続の開始があったと知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述します。
相続開始の翌日から4ヶ月以内
■準確定申告
被相続人の生前に所得があり、確定申告を要する場合には、亡くなった年の1月1日から死亡日時点までの所得について申告する必要があります。これを準確定申告といい、「被相続人の死亡を知った日の翌日から4ヶ月」の期限内に、被相続人の住所地を所轄する税務署へ申告納税します。
相続開始の翌日から10か月以内
■遺産分割協議 ※遺言書がない場合
遺言書が見つかれば、そこに記された遺産分割方針に従って財産を相続することになりますが、遺言書がない場合には、遺産をどのように分け合って相続するかを相続人が決めなければなりません。この話し合いを遺産分割協議といい、相続人全員が協議に参加し遺産分割について合意に至れば、遺産分割協議の成立となります。
協議結果は遺産分割協議書として書き起こし、相続人全員で署名捺印します。
遺産分割協議に期限の定めはありませんが、相続税の申告期限までに遺産分割を終えていない場合、遺産分割が要件となっている特例を適用できなくなってしまうため、早めに取りかかることをおすすめいたします。
■申告書の作成および納税資金の確保
遺産分割協議を終え、それぞれの取得金額から納税額を算出し、相続税の申告書類を完成させます。
期限内に納税も完了させなければならないため、納税資金の確保も大切です。相続税は金銭一時納付が原則ですので、手元に現金がない場合は不動産の売却や金融機関からの借り入れも検討する必要があるでしょう。
どうしても納税資金を確保できないやむを得ない事由があるときは、一定の要件のもと、延納(分割払いでの納税)や、物納(現金以外の相続財産での納税)を申請することもできます。
このように相続税を申告するまでには行うべき手続きが数多くあります。期限内に手続きを滞りなく進めるのは非常に大きな負担となるため、相続税申告を要する場合はほとんどの方が税理士に依頼するのが実情です。
熊本相続税申告相談プラザは司法書士など各士業の専門家と連携しており、相続手続きをトータルでサポート可能となっております。相続税ん関する知識と経験を豊富に培っておりますので、どうぞ安心してお任せください。